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日々の制作と生活を、思いつくままに描く。札幌在住、美術家。西田卓司のブログ。


by takuji0808

絵画の現在地 感想

お久しぶりですが、生きていますし元気です。

もう始まっていますが唐突に出品している展示に関しての宣伝、感想です。

備忘録のようなもので、言葉も乱雑で、申し訳ありません。

ただし、展示自体は非常に面白いし見応えもあるので、是非ご高覧いただければとおもいます。


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絵画の現在地 感想_c0211701_09093011.jpg


500m美術館vol.27「絵画の現在地」

会期 : 2018年7月14日(土)〜2018年10月3日(水)


■開催概要

会期|2018年7月14日(土)~2018年10月3日(水)

時間|7:30~22:00

会場|札幌大通地下ギャラリー500m美術館

住所|札幌市中央区大通西1丁目〜大通東2丁目
(地下鉄大通駅と地下鉄東西線バスセンター前駅間の地下コンコース内)

企画担当|高橋喜代史(美術家/一般社団法人PROJECTA)

企画協力|鈴木悠哉(美術家)、山本雄基(画家)

協力|児玉画廊、さっぽろ天神山アートスタジオ、寝床AIR、東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)

主催|札幌市


500m 美術館では初となる絵画の展覧会「絵画の現在地」を開催します。 色彩や明度、形や造形、空間、構図、物質性、筆跡や痕跡、テーマなど絵画が持つ魅力や見所は多々ありますが、 インターネットや映像ストリーミングにおいて画像や映像などのイメージが溢れる現代社会のなかで、 絵画を描き続ける画家たちの思考や想い、根源的な表現欲求にふれることができないかと考えました。 本展は絵画でしか成立しない複雑な平面空間を思考し、多彩な画面構築に取り組む画家たちの作品を一堂に展示することで、 絵画が持っているダイナミズムや美しさ、奥深さや幅広さをより一層身近に感じられる展覧会となります。


出品作家

荻野僚介

笠見康大

佐藤克久

小林麻美

武田浩志

中田有美

西田卓司

野原万里絵

久野志乃

 

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以下感想です。


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◆荻野僚介


平坦に消去された筆触や色面の強さが特徴だが、じっと作品のエッジを観察していると、シンプルでミニマムなだけではないことに気付く。それらの要素だけで絵画を成立させることがいかに難しいのかが分かってくる。

結晶形態という現象を思い出す。鉱物の原子配列が外形に表れているものであり、その形は同定の手がかりになる。永い時間の中で純粋化したときに、内存する本質が外形に表出していく。

結果として現れ、結晶化された作品が美しさを持ち得ているのは、その過程だけではなく根底の作者の思いが結実しているからだ。そのピュアで愚直な作品に対する姿勢を感じた瞬間に、画家はある種の救いを得るだろう。



◆笠見康大


近い作家として(よりドロドロしている違いはあるけれど)ミロとか杉戸洋さんを思い出した。作品として良いのは分かるがロマンチックだったりポエティックな表現にピンとこない部分があって、それは自分の個人的な嗜好だろうと思う。

多分、ほかの人も同じようにわかりにくい要素があるとしたら、そのあたりのセンチメンタルな日記か私信のような要素が、作品の中で大切な要素としてあって、そしてその感情的な個人的な部分は他者から読み解きにくい、共感しづらいものだからだろう。それが必要かどうかは別だが。

近作で、マスキングしたような色面を画面の中で大きく対比させているのは、地と図の関係とか、遠近法とか、絵の中に近いものと遠いものが一緒にあることでその遠近感が錯綜することをやっているのだと思う。以前の、画面の中に点をボカしている仕事も、そう考えると共通するものを感じる。



◆佐藤克久


アーティストは作品を作る上で、自分のルールを持っていると思う。

厳守すべきものもあれば、改訂していくものもある。そのルール自体を組み替えることもある。それは方法論や作風と言い換えてもいい。

何を描くか、どのように描くかではなく、何を選ぶか、選ばないか。

絵を描くということも人生のなかでひとつの選択肢であり、すべて選択の連続だ。

そのなかで、自分たちが持っているルールの穴をバグのように軽やかに貫通していく。

絵画とは狭い世界のなかでのある種のゲーム(仕組み)のようなもので、どこか揶揄している雰囲気を感じるのは、穿った見方だろうか。



◆小林麻美


作者や絵画という枠組みのなかにいる登場人物たち、絵画を見ているわれわれ鑑賞者など、絵画という視覚メディアに関係する登場人物の視点が何かを透過したり、入れ替わり、反射され、交錯していく。

第四の壁という演劇用語がある。舞台上に実在する左右と奥側の壁に対して、観客側の“4つ目の壁”を指している。実在しない壁の向こう側(舞台上)は劇が演じられる「虚構の世界」で、観客側は私たちが生活する世界と地続きな「現実の世界」だ。そこから「虚構と現実を隔てる壁」という意味を持っている

映画や演劇では「観客に向かって語りかける」行為によってその壁を破るのがポピュラーなのだが、小林作品において「絵画という虚構」を通して『今あなたが見ているのは、私(作家)が見た世界なのか?現実の絵画なのか?そもそもあなたは普段何を見ているのか?』と問いかけてくる。

作品は見るという行為がどれだけ豊かであり、我々が普段見ているようで何も見ていないのかを揺さぶってくる。(メタフィクションはフィクションの中に上位の立場にある現実を引き込むことで、虚構であることをより強調させる力を持っている)

第四の壁を破るということは、「これはうそですよ」という意味の一種のユーモアであり皮肉だ。




◆武田浩志


ポートレートシリーズに関して。

絵画空間を作家の「擬似的な遊び場」として想定する。ゲームマスターである作家のポートレートがアバターだとするとその二次的な身体は抜け殻であり、本人はログオフしている状態である。そうなるとイメージとしては、ゲームの攻略本にあるようなキャラクターや装備、アイテムの一覧表のように見えてくる。

特に今回のように並べてプリントアウトして表示されることで作家の収集欲や、魔改造していくマッドな気質が強調されているようで面白い。

ほかの絵画作品との共通性を見出すとしたら、(レイヤー構造であること、透明層があることはもちろんだが)iPadで描かれた線が2次的な身体あるいは身体の痕跡となることだろう。

タブレットやPCの操作、デザインの仕事、作品制作、絵を描くという行為が作家の中では等価で、横断して影響しあっていて、そういう意味では素直と言えるかもしれない。



◆中田有美


映像史や絵画史がテクノロジーの歴史や社会の変化と密接な関係は周知の事実である。

中田有美のブリコラージュされたデジタルイメージは、プリントアウトされた壁面と等身大の絵画作品が同時に展示されている。その比較によって虚実の関係性や身体の距離感、現代の消費社会、解像度や物質性、デジタル社会での皮膚感覚が浮き彫りになる。



◆西田卓司


自分で自分を評価、批評できない。

とりあえず今回考えていたことを書くと

自分はコラージュ作家ではないか、ということだ。

既成のもの、身近にあるものを寄せ集めて、形にするということを素直に出した感じがあります。

あとは、DIY感というか、チープな感じになるのは強みでもあり弱みでもあるので、その面白さをどう出していけばいいのかってことを考えていた気がします。

展示されていて、自分が画家っぽくなれないコンプレックスみたいなものも何となく感じて、そういう中途半端さも上手く作品に落とし込めたらいいなと思います。



◆野原万里絵


身体(=絵を描くという行為)の反復と拡張。

その残像と痕跡が空間を覆い尽くしていく。

現代のネット社会や情報過多、VR技術によって融解する身体と世界のボーダーをシンプルな所作でなぞり続けている印象。

出来上がった境界線は展示することで壁のように立ちあがるが、そこに見えてくるのは、世界を区切る抑圧され規制されたものではなく、われわれを解き放ってくれる大きな窓のような、開放された世界だ。



◆久野志乃


どこかに続いているような風景、誰かの記憶のなかの、どこかにある風景。

現実的でありながら、あいまいで、架空な物語はむしろ普遍性を帯びていく。

近作の安定した構図が、よりその傾向を高めている印象がある。

一見絵本のような世界観にも見えるが、どちらかというとSF短編小説が近いもかもしれない。




# by takuji0808 | 2018-08-19 00:40 | 展覧会感想

GWは青森で。

いとこの結婚式のため姉妹とその旦那とかで青森へ。

GWは青森で。_c0211701_16423526.jpg


夜出発して朝一の函館・大間フェリーに乗船。とりあえず大間で海鮮丼。
むつ市でお土産購入し一路脇野沢へ。(遠い…)
近くの旅館で16時から呑むという非現実感。
GWは青森で。_c0211701_16425325.jpg

GWは青森で。_c0211701_1643930.jpg

翌日はむつ市に戻り結婚式へ。
こっちの結婚式は300人くらい呼んで、3時間ずっと余興という田舎スタイル。
また脇野沢に戻り呑む

次の日はまたフェリーで大間へ。函館ではラッキーピエロでジャンクに。
結局夜の8時着。うーん、あっという間のGW… 食って呑んで移動ばかりだった気がする。

GWは青森で。_c0211701_16441029.jpg

# by takuji0808 | 2014-05-21 16:48 | その他

プロジェクター購入

迷った末、「EH-TW410」(2800lm、コントラスト比10000:1)を購入。

色々あって、だいぶ安く購入できた。
アマゾンより安く、5年保証あり、ポイント10%付きでした。

浮いたお金でついでに「D-sub15ピンコード 5m」、「ヤザワ どっちもクリップ」、「30ピンVGAアダプタ」「SANWA SUPPLY BAG-PRO2 プロジェクターバック」も購入。
PC用の「Mini DisplayPort -VGA アダプタ」は購入済み。

App Storeで「Camera Vision」もダウンロード。
実際に接続し動作を確認。A4コピー紙に鉛筆で書いたものを見せても全く問題なし。

しかし考えてみると教室のスクリーンの比率って、昔の4:6比率を基本にしているのか、投影したときに美しくないな。(仕方ないけど)

PowerPointに関しては「MyPoint」というアプリで離れた場所からのスライドショー可能だったのは確認済み。
これで肝心のプレゼン(授業)内容の精度も向上するってもんです。

とは言っても、美術の授業では作品の視聴、実作業の実物投影がメインだろうな。
こうなると移動可能のプロジェクタ用の台が欲しくなるので、これはDIYで自作だな…
# by takuji0808 | 2014-05-08 00:48 | 購入

東京(3/25〜26)

東京に行ってきました。

バニラエアにしましたが、CAの制服がサンダーバードみたいだなーとおもって見ていました。
おばかな感想ですね。今回はずっとこんな感じです。

東京(3/25〜26)_c0211701_23255773.jpg


<1日目>
『VOCA 2014 現代美術の展望―新しい平面の作家たち』
 上野の森美術館
『MOTアニュアル2014 フラグメント―未完のはじまり』
『驚くべきリアル:スペイン、ラテンアメリカの現代アート―MUSACコレクション』

 東京都現代美術館
『金氏徹平 フライド幽霊とボイルド空想』 
シュウゴアーツ
『武田陽介 Stay Gold』
 タカ・イシイギャラリー

成田空港着のため、そのまま上野の『VOCA 2014』へ。
ふーむ。入賞作品はイラストっぽいというか、ピンとこないなあ。
作家別の作品のレベルとか傾向というより、保守的・体制的というかVOCAのシステムがメタボリックになっている感じなんだろうか。
山本さんの最大最厚作品は気合い十分で迫力あってここ最近のなかでは代表作品だろう。
絵画の大きさという難しさがシステム化と、手工業的な技術に裏打ちされている感じ。
これだけ色を使うことに対してバリエーションがあるのはうらやましい。

東京都現代美術館へ。
青田真也作品が好み。(単純にプラスチックをヤスリがけしているからか 笑)
パラモデル、金氏徹平、その前だとヤノベケンジの作品に共通する部分を何となく考える。
森美術館がこの日に限って17時クローズ。(いつもは22時まで)
とりあえず浅草をぶらぶら。モツ煮とビールで孤独のグルメごっこ。

<2日目>
『アンディ・ウォーホル展:永遠の15分』

 森美術館
『ラファエル前派展』
 森アーツセンターギャラリー
『イメージの力―国立民族学博物館コレクションにさぐる』
『中村一美展』

 国立新美術館

東京行きの決定打、ウォーホル作品群。
デザイナー時代からの再現への固執、線と面の関係性が軽やかに入れ替わる流れ、作品の中にある人間臭さ、メインストリームにのしあがること、世俗とコンテクストに自身を寄せていく意味など、語りたいことや考えたいことがたくさんだ。でも観賞後は身体をスッと通り抜けていくような喉越しが心地よい。
これだけ表面的で軽やかで多弁でセンスがあって、謎を楽しめる作家はいないと思う。
もちろん、そんな軽さだけではなく、斜に構え過ぎてこちらが混乱してしまうような現代美術の面白さに、何かを突きつけられる想いだ。

ラファエル前派は、ミレイの『オフィーリア』(1851-52)はもちろん一級品のオーラがムンムンでよかったのだが、その近くに展示していた『マリアナ』(1851-52)にキュンときた。
ステンドグラス部分が、透明度の高い絵具で描かれていて、それがまたいい。
全体的に、細密な自然描写とか日本人好みって感じがする。
逆説なんだけど、フラットな下地と自然描写が水彩画や日本画を連想させるからだろうか。

国立新美の中村一美展はゲップがでるほど絵画ラッシュ。

あのジャムみたいな絵の具ってなんのメディウム使っているんだろう…
巨人が絵の具を繊細に塗りたくっているようにも見える…
そんな近景遠景を行き来しながら絵画空間を堪能する。

絵画を突きつめればその分、言語化すること、批評することの難しさを感じるなあ。
しかし国立新美は本当にスケールの大きい絵画作品の展示に向いている空間なんだなー。

あと単純に思った(確認した)のは、手慰みな自己満足・自己陶酔なゲンダイビジュツな作品をちまちま作っていても、それは目先の仕事でしかない。もっと大きくて長くて苦しくて、わけのかからないものに賭けることでしか得られないことっていうのは確実にある。
ここまで行かなくとも、絵画をやっていって50歳とか60歳で美術館で個展をやるとことを考えたら、今のうちに大きな代表作を複数作っておかなきゃ意味ないんだな。

うーん、うーんとうなりながら帰ろうとしたら、成田空港への列車が運休状態。
乗り換えアプリでさくさく検索し問題なく帰宅。そうiphoneならね。

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# by takuji0808 | 2014-04-05 23:55 | 展覧会感想
木製パネルの作り方(100号Ver.)

小さいパネルの作り方を基本にしているので、細かいことは過去に書いた記事を参考にしてください。↓
http://takuji0808.exblog.jp/18263072/


小さいパネルを作るのと大きな違い、ポイントは以下の二つ

・ベニヤ板とベニヤ板の継ぎ目を、フラットで隙間無く作ること。
・全体が歪まないような構造、組み立て方にすること。

図面はこんな感じ。
100号の木製パネルの作り方_c0211701_23514037.jpg


大きなパネルやキャンバスを作って格好悪いのは、展示したときに角が浮き上がっていることです。
(まあ展示する空間の環境で木が反ることは多々あるので、展示するときにワイヤーをうまく使ったりするんですけど)
木材の材質はもちろんですが、反りを防ぐには支持体の厚みと中木、角の補強が重要だと思います。
中木を増やせば反りは少なくなるでしょうが、重たくなってしまうのが悩ましいところです。

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# by takuji0808 | 2013-07-24 00:05 | 制作