日々の制作と生活を、思いつくままに描く。札幌在住、美術家。西田卓司のブログ。


by takuji0808

食モチーフのアート

食モチーフのアート

「食」とアート(美術)の関係は、意外と根深い。

食べる様子や、食べ物が絵画のモチーフとして、
あるいは作品の重要な要素として、
あるいは食物自体が彫刻の材料として用いられてきた。

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古くは静物画におけるモチーフ(死と生の両義性を意味するもの)から、
アルチンボルトに代表されるトリックアート的なもの(本物そっくりの面白さ)。

「食べるもの」を作品にする、という逆説的な意味もあるし、
あるいは貧富の差の隠喩として、家族の絆として描かれる場合もある。

またキリスト教における聖餐(せいさん)、つまりパンやワインを
神の一部に見立て、食べること=神の恵み≒信仰の糧という図式を
美術作品であらわす、というニーズがあった。

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現在では「食」と「アート」という言葉で連想されるのは、
おしゃれなレストランの、キャンバスに見立てたお皿の料理だったり、
カフェなどに並立した展示空間とのコラボレーションなどがイメージされるだろう。

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一方で現代アートで食を作品の重要な要素として掲げた作家は少ない。

有名なのはタイ人のアーティスト、リクリット・ティラバーニャによるリレーショナルアート(コミュニケーションアート)でしょうか。カレーや焼きソバを作っては、観客にあげて、そして、観客たちはその場で食べる。それだけ?!とツッコミたくなるずるい方法だ。

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日本人では、思いつくのは小沢剛による、野菜を武器に仕立てあげる「ベジタブル・ウェポン」シリーズ。また、彼の有名な作品のひとつでもある、醤油を画材にして描いた「醤油画」。

<参考>オオタファインアーツのHP
http://homepage2.nifty.com/otafinearts/works/works-ozawa/ozawaworks-vege.htm

(選んだ2人が多彩多作なので、彼らにとって「食」というテーマが
 主軸であるとも言いきれないのも、なかなか興味深いことです。)

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昨今の食の安全の問題は根深く、それをアートで表現すること自体ナンセンスであり
正直手をつけたくないというのも作家にとって、本音ではないでしょうか。

(原発問題、放射能問題をきっかけとしているだけで、もちろんそれ以前にも
 さまざまな問題提起がなされていました。)

なぜ、「食」をメインに活動する作家がいないのか?それは
「食」というテーマ設定で行われるアートには粉骨砕身の目新しさがなく
一発芸のような作品になってしまうという弱点があるように見えるからでしょう。

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現代社会の問題を浮き彫りにするモチーフ・素材なのに
意外と用いられていないので、いろいろな問題を解決すればまだまだ可能性があるのでは?

なんて思ったわけです。

メモ代わり。
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by takuji0808 | 2011-07-18 21:20 | つぶやき