日々の制作と生活を、思いつくままに描く。札幌在住、美術家。西田卓司のブログ。


by takuji0808

「絵画の場合ー最終章ー」感想<A>

「絵画の場合ー最終章ー」感想
(2012年3月14日~2012年4月1日 )

個人個人の作品の感想・批評を書いているブログが一つも見当たらないという悲しい現実に愚痴っていても仕方が無いので、もう自分でやるしかないでしょう、こんちくしょうめ。
(というか自分より笠見さんとか山本さんのほうが思想オタク・絵画オタクだからよりレベルの高い感想が書けるとおもうのだけど…グチグチ…)

*鑑賞した順番です (敬称略)

<ギャラリーA (1階)>

●笠見康大
メンバーのなかで一番身体的な作品なのかな、というのが第1印象だったが、いまはちょっと違い、一番「感情的な」作品だと思っている。それは情動と情念と感情の間を身体を介して絵画にしているように感じるからだ。(*情動とは,身体的なものにまで影響を及ぼすような強い感受的状態のことである。これに対して情念とは,情動がさらに強まって永続化し,われわれの生の自然の流れがせきとめられて苦悩にさらされている状態である。そしてさらに感情とは,統御され自覚された情念のことである。)ざっくり言えば感情論の可視化だろうか。

しかしほぼ毎日描くことで手癖や方法がパターン化していくような状況や、紙のサイズや筆の大きさ、絵の具の種類によってベストな方向に向かってしまう本能的な部分をポジティブに受け止めて、いっこいっこ片付けているようだ。そういう画家の体内時計(世間とは違うスピードで流れる制作過程)をみると、等身大の人生の切り開き方(それができるかどうかはさておき)を見ているようで勇気づけられもするし、これでいいのかなと不安になったりもする。

ストロークやグラデーションの面に、紙をこすったような、かすれた表現が混じっていったキネティックな感じのドローイングが新鮮だった。

例えるなら、混ぜご飯おにぎりとちらし寿司。

●澁谷俊彦
近作で行っているのは、反射光と場との関わり方と言い切れるだろう。となると、変な場所であればあるほど作品はその場所に合わせ、あるいは状況が想像を超えていく多弁さを持つ可能性がある。だから春香山やモエレ沼のような過酷な、それこそ人の来ないような場所での仮説的な、記録のみでの展示を見てみたいとも思う。

デザイナーとして、もっとはっきり言えばウインドウディスプレーヤーのような感覚で、ニーズに応える割り切りがあっても良い気がする。というのも、今回の展示の場所は、澁谷さんの作品はランドマークの役割が大きかったと思うのだが、その役割を果たしているとは言いがたいからだ。しかしアーティストとしては、風や雪など色んな要素を取り入れている貪欲さが前に出ている時期なのかもしれないので、今後作品を絞り込んでいかなくては行けない時期にどのように変容するのかが楽しみとも言える。

例えるなら、公園で食べる幕の内弁当。

●山本雄基
今展示で、狡い方法で(笑)作った最大サイズの作品と最小サイズの作品。皆が言っている「今後の展開が楽しみ」が結構この作品を言い当てている気がする。もうこのサイズでこの作品を発表してしまっては、丸以外の幾何学形態(直線)のみを用いた、従来のようなサイズの作品を見てみたいというのが、鑑賞した人の要望になってしまうのではないだろうか。丸シリーズ、三角シリーズ、四角シリーズ…みたいな

しかしこのサイズでしか新しい方法を提示できなかったというのは、逆に面白く感じる。もっと、コントロールできる適度な大きさで作ることも可能だったはずなのに、「大きさ・数」という過剰さを選択したという嗅覚は今の時代的なものなのかもしれないし単なるこの展覧会だけの意地なのかもしれない。しかし落ち着いた色彩や手仕事感を無くしている感覚は、それとは相反している。つまり山本さんの子供の頃の記憶やモダニズム・絵画史(80年代的なもの)と、リアルタイムにある感覚・山本さんの身体性(00年代〜10年代的なもの)の、そういう両義性をどういうバランスで提示するかが作品の肝となる気がする。

例えるなら、和風クリスピーピザ。

●武田浩志
アーティストトークでは「ポートレートシリーズの解体過程」を展示した、と言っていた気がするが、展示はそれに尽きるだろう。

近作の印象としては、ノイズの作り方・使い方の上手さが目を引いた。時間的な問題(短い製作期間)を逆手に取って、ズレや剥がれ、泡、傷のような本来良しとされないテクスチャーを積極的に作品に取り入れているので、技術的な部分での制球力、防御率の高さはダルビッシュ並みなことを再認識した。

同時に、そういうライブ感、野獣的な部分は在学中の作品との共通点もあるようで、前述の「ポートレートの解体」という意味合いとリンクして興味深い過程だとおもう。

例えるなら、デパ地下スイーツセット。

<続く>
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by takuji0808 | 2012-04-18 16:38 | 展覧会感想